住宅や建設の費用が上がる背景には、人件費や物流費だけでなく、建材に使われるナフサ由来素材の影響もあります。
ナフサは、プラスチックや合成樹脂のもとになる石油化学原料です。
近年は、ナフサ不足だけでなく「ナフサ危機」や「ナフサショック」という表現で、包装材や石油化学製品への影響が報じられることも増えています。
建築・建設分野では、塩ビ管、断熱材、防水シート、接着剤、塗料、養生材など、完成後には見えにくい資材にも広く関係しています。
ナフサ不足は、建材価格の上昇だけでなく、リフォーム費用、住宅価格、工期遅延にもつながる可能性がある問題です。
この記事では、ナフサ不足が建築・建設業にどのような影響を与えるのか、値上がりしやすい建材や現場で起きやすいリスク、住宅購入・リフォームを考える人が確認したいポイントまで、生活目線でわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- ナフサ不足が建設業に与える影響
- 建材価格やプラスチック資材が高騰する理由
- 工期遅延や住宅価格への波及リスク
- 中小建設会社や工務店への影響
- 建設業界が今後取るべき対策
ナフサ不足で影響を受けやすい建材一覧
| 建材・資材 | 主な用途 | 影響 |
|---|---|---|
| 塩ビ管 | 給排水設備 | 価格上昇・納期遅延 |
| 断熱材 | 住宅・建物の断熱 | 原料高によるコスト増 |
| 接着剤・塗料 | 内装・外装工事 | 施工費上昇 |
| 防水シート | 屋根・外壁・基礎工事 | 資材価格上昇 |
| 養生材 | 工事現場の保護 | 現場コスト増加 |
ナフサ不足で影響を受けやすい業界一覧
| 業界・分野 | 主な影響 | 関連記事 |
|---|---|---|
| 食品・生活 | 食品包装・日用品・生活必需品の価格上昇 | 食料品への影響・日用品への影響 |
| 小売・店舗 | 包装材・容器・物流費の上昇 | コンビニへの影響・スーパーへの影響・ドラッグストアへの影響 |
| 食品供給 | 農業資材・漁業燃料・食品工場の包装材コスト増加 | 農業への影響・漁業への影響・食品工場への影響 |
| 加工食品 | 容器・包装フィルム・製造コストの上昇 | 冷凍食品への影響・カップ麺への影響 |
| 外食・給食 | テイクアウト容器・給食費・食材配送費への波及 | 外食への影響・給食への影響 |
| 物流・製造 | 燃料費・段ボール・包装資材・部品価格の上昇 | 物流への影響・製造業への影響 |
| 建設・住宅 | 建材・断熱材・塩ビ管・リフォーム費用の上昇 | 建設業への影響・住宅への影響 |
| 医療・先端産業 | 医療資材・半導体関連部材・電子機器への影響 | 医療への影響・半導体への影響 |
| ホームセンター | DIY用品・園芸資材・収納用品・建材の価格上昇 | ホームセンターへの影響 |
- ナフサ不足とは?建築・建設業に関係する理由
- ナフサ不足の影響|建築・建設業に何が起きるのか
- ナフサ不足で影響を受けやすい建築資材一覧
- ナフサ価格と建材価格の実態データ(2024〜2026)
- ナフサ不足の建設現場で「実際に起きている問題」
- 企業事例|ナフサ不足が実際に建設・素材業界へ与えた影響
- ナフサ不足の影響を受けている主な企業・業界動向
- なぜ建設業だけ影響が大きいのか
- ナフサ不足による建設業のリスク対策
- 建築・建設業界の今後|ナフサ依存からの脱却は進むか
- ナフサ不足はいつまで続く?今後の見通し
- ナフサ不足はおさまりつつある?建設業への影響は今後も残る
- ナフサ不足の関連記事一覧
- ナフサ不足・建設業に関するよくある質問 FAQ
- まとめ
ナフサ不足とは?建築・建設業に関係する理由

ナフサ不足は、建築・建設業にとって無関係な話ではありません。
ナフサはプラスチックや合成樹脂のもとになる石油化学原料であり、建築現場で使われる配管材、断熱材、防水材、接着剤、塗料、養生材などにも関係します。
建物が完成すると見えにくくなる部分にも、ナフサ由来の素材は多く使われているのです。
そのため、ナフサの価格や供給が不安定になると、建材価格、工事費、リフォーム費用、工期に影響する場合があります。
ナフサ不足は、建築・建設業では「見えない建材コスト」の上昇として表れやすい問題です。
| 建設現場で関係するもの | ナフサとの関係 | 起こりやすい影響 |
|---|---|---|
| 塩ビ管・樹脂配管 | 塩ビ樹脂や樹脂素材に関係 | 配管資材の価格上昇 |
| 断熱材・防水シート | 石油化学素材を使う製品がある | 住宅性能部材のコスト増 |
| 接着剤・塗料・シーリング材 | 化学原料や樹脂成分に関係 | 仕上げ材・補修材の価格に影響 |
| 養生材・梱包材 | フィルム、テープ、樹脂シートに関係 | 現場消耗品の負担増 |
ナフサの役割と石油化学製品との関係
ナフサは、原油を精製する過程で得られる石油製品の一種です。石油化学工場では、ナフサを高温で分解し、エチレンやプロピレンなどの基礎化学品を作ります。
これらの基礎化学品は、さらに加工されてポリエチレン、ポリプロピレン、塩ビ樹脂、合成ゴム、接着剤、フィルム、樹脂部材などへつながります。
建築・建設業で使われる資材の一部も、この石油化学製品の流れと関係しています。
ナフサは、建材そのものを直接作る材料というより、建材に使われる樹脂素材や化学素材の出発点です。
たとえば、塩ビ管に使われる塩ビ樹脂は、エチレンと塩素を上流原料とする素材です。
エチレンは石油化学工業でナフサを主原料として生産されるため、ナフサ価格や供給不安は、建設資材のコストにも関係します。
このように、ナフサ不足は「プラスチック容器だけの問題」ではありません。
住宅や建物の中に使われる配管材、断熱材、防水材、接着剤、樹脂部品などにも影響する可能性があります。
参考:石油化学工業協会・ナフサ分解工場・塩ビ工業・環境協会・塩ビ工業の概観
ナフサ不足が起きている背景(原油価格・供給不安)
ナフサ不足が注目される背景には、原油価格の変動、海外からの調達不安、石油化学業界の生産調整、国内プラントの再編などがあります。
ナフサは原油由来の原料であるため、原油価格が上がるとナフサや樹脂原料のコストにも上昇圧力がかかります。
また、日本の石油化学産業は、原油やナフサなどの資源を海外調達に頼っている状況です。
中東情勢や輸送ルートへの不安が強まると、実際に供給が止まらなくても、企業は調達リスクを意識しやすくなります。
ナフサ不足は原油価格だけでなく、国際情勢、輸入依存、国内の石油化学設備の見直しが重なって起きる問題です。
建設業では、資材の調達遅れや価格上昇が工事全体に影響します。
配管材、断熱材、防水材、接着剤、塗料、養生材などは工事の途中で必要になるものが多く、特定の資材が不足すると工程調整が必要になる場合もあるでしょう。
ただし、建設費の上昇をナフサ不足だけで説明するのは正確ではありません。
人件費、物流費、電気代、鋼材価格、木材価格、為替、住宅設備価格なども関係します。
ナフサ不足は、その中でも樹脂素材や化学建材に関わる要因として見ることが大切です。
ナフサ不足全体の背景は、ナフサ不足の原因と生活への影響をまとめた記事でも詳しく解説しています。
建築・建設業でナフサ由来素材が使われる場面
建築・建設業では、ナフサ由来の素材がさまざまな場面で使われています。
代表的なのは、塩ビ管、樹脂配管、断熱材、防水シート、シーリング材、接着剤、塗料、養生フィルム、梱包材などです。
これらは、建物の見た目を作る材料というより、配管、断熱、防水、固定、保護、仕上げ、現場管理を支える資材です。
完成後には目立たないものの、工事には欠かせない素材が多く含まれます。
ナフサ由来素材は、住宅の内側や建設現場の消耗品にも使われており、工事費に見えにくく反映されます。
| 使用場面 | 主な資材例 | 影響の出方 |
|---|---|---|
| 給排水・配管 | 塩ビ管、樹脂配管、継手 | 配管工事費・資材費に影響 |
| 断熱・防水 | 断熱材、防水シート、防湿材 | 住宅性能部材の価格に影響 |
| 仕上げ・補修 | 接着剤、シーリング材、塗料 | 内装・外装・補修費に影響 |
| 現場保護 | 養生シート、養生テープ、保護フィルム | 現場消耗品のコスト増 |
| 輸送・保管 | 梱包フィルム、緩衝材、樹脂パレット | 資材配送・保管コストに影響 |
特に、塩ビ管や樹脂部材は、建築設備や配管工事で広く使われる資材です。
水回りのリフォーム、住宅設備交換、外構工事、配管更新などでも関係するため、住宅購入者やリフォーム検討者にも影響が及ぶ可能性があります。
また、養生シートや保護フィルム、梱包材のような現場消耗品も見逃せません。
1つひとつの単価は大きくなくても、建設現場では大量に使われるため、価格上昇が積み重なると工事全体のコストに影響します。
住宅分野への影響は、ナフサ不足が住宅に与える影響を解説した記事でも確認できます。
原油高とは違う「建材コスト」の問題として見る
ナフサ不足を考えるときは、原油高と混同しないことも重要です。
原油高は、ガソリン代、軽油代、重機燃料、配送費、電気代など、燃料・エネルギーコストに影響しやすい問題です。
一方、ナフサ不足は、塩ビ管、断熱材、防水材、接着剤、塗料、養生材、梱包材など、石油化学由来の建材や資材に関係します。
どちらも建設費に影響しますが、影響するルートが異なります。
建築・建設業への影響を正しく見るには、原油高による燃料費の上昇と、ナフサ不足による建材・樹脂素材の上昇を分けて確認することが重要です。
原油高による物流費や生活費への影響は、原油高で生活費がどうなるかをまとめた記事で確認できます。
建築・建設業では、燃料費と建材費の両方を分けて見ることで、価格上昇の理由を理解しやすくなります。
ナフサ不足の影響|建築・建設業に何が起きるのか

ナフサ不足は、建築・建設業では建材価格の上昇、資材調達の不安定化、工期遅延、利益圧迫として表れます。
特に影響を受けやすいのは、塩ビ管、断熱材、防水シート、接着剤、塗料、シーリング材、養生材、梱包材など、石油化学素材を使う建材や現場資材です。
ナフサ不足による建設業への影響は、完成後には見えにくい配管・断熱・防水・接着・養生などの資材コストに出やすい点が特徴です。
| 影響 | 主な資材例 | 建設業で起きやすいこと |
|---|---|---|
| 建材価格の高騰 | 塩ビ管、断熱材、防水材、塗料 | 見積もり上昇、原価増加 |
| 資材不足 | 樹脂部材、シート類、接着剤 | 工程調整、納期遅れ |
| 現場コスト増 | 養生材、梱包材、保護フィルム | 消耗品費の積み上がり |
| 経営圧迫 | 資材全般、外注費、運搬費 | 利益率低下、価格転嫁の遅れ |
| 住宅価格への波及 | 住宅設備、配管、断熱、防水資材 | 新築・リフォーム費用の上昇 |
建材価格の高騰(プラスチック・断熱材・塗料)
ナフサ不足で最もわかりやすい影響は、建材価格の高騰です。
建築・建設業では、木材や鉄鋼だけでなく、プラスチック、合成樹脂、接着剤、塗料、断熱材、防水材など、多くの石油化学素材が使われています。
ナフサは、エチレンやプロピレンなどの基礎化学品を作るための原料です。
そこから樹脂素材、フィルム、合成ゴム、接着剤、塗料原料などが作られ、建設現場のさまざまな資材につながります。
建材価格の上昇は、目に見える外装材だけでなく、配管・断熱・防水・接着・塗装などの見えにくい部分にも広がる問題です。
たとえば、塩ビ管や樹脂配管は、給排水設備や住宅設備工事で使われます。
断熱材や防水シートは、住宅性能や雨漏り対策に関係する重要な資材です。
塗料やシーリング材、接着剤は、内装・外装・補修工事で欠かせません。
これらの資材価格が上がると、建設会社の仕入れコストが増えます。
見積もりに反映できる場合は発注者の負担が増え、反映できない場合は施工会社の利益が圧迫されます。
住宅向けの詳しい影響は、ナフサ不足が住宅に与える影響を解説した記事を参考にしてください。
ナフサ不足全体の原因はナフサ不足の原因と生活への影響をまとめた記事で整理しています。
参考:石油化学工業協会・ナフサ分解工場・塩ビ工業・環境協会・塩ビ工業の概観
工期遅延・資材不足のリスク
ナフサ不足は、価格だけでなく工期にも影響する場合があります。建設現場では、必要な資材が予定どおり入らないと次の工程に進めないことがあるためです。
特に、配管材、防水材、断熱材、接着剤、シーリング材、塗料などは、工程の途中で必要になる資材です。
代替品を使える場合もありますが、性能、規格、施工方法、保証条件が合わないと簡単には切り替えられません。
建設現場では、ひとつの資材不足が工程全体の遅れにつながることがあります。
たとえば、防水材が遅れれば外装や内装に進めない場合があります。
配管資材が不足すれば、水回り工事や設備工事の予定がずれます。
塗料や接着剤が入らなければ、仕上げ工程や補修作業にも影響するでしょう。
また、建設現場では、資材の価格だけでなく納期も重要です。
資材の入荷時期が読みにくくなると、職人の手配、重機の手配、外注業者の予定、引き渡し時期にも影響が広がります。
ただし、工期遅延の原因をナフサ不足だけに絞るのは正確ではありません。
人手不足、物流の混乱、天候、設備機器の納期遅れ、輸入資材の遅延なども関係します。
ナフサ不足は、その中でも樹脂系資材や化学建材に関わるリスクとして見ておく必要があります。
梱包材や物流資材への影響は、ナフサ不足が物流に与える影響を解説した記事でも詳しく確認できます。
建築・建設業でナフサ由来素材が使われる場面
建築・建設業では、ナフサ由来素材が完成後には見えにくい場所でも使われています。
代表的なのは、給排水の配管、断熱、防水、接着、塗装、養生、梱包、資材保護の場面です。
完成した住宅や建物を見るだけでは、どこに石油化学素材が使われているのかわかりにくいかもしれません。
しかし、現場では樹脂製品やフィルム、シート、テープ、接着剤、塗料などが日常的に使われています。
ナフサ由来素材は、建物の性能を支える資材と、現場作業を支える消耗品の両方に使われています。
| 使用場面 | 資材例 | 影響の出方 |
|---|---|---|
| 給排水・設備 | 塩ビ管、樹脂配管、継手 | 水回り・設備工事費に影響 |
| 断熱・防水 | 断熱材、防水シート、防湿材 | 住宅性能・防水工事費に影響 |
| 仕上げ・補修 | 塗料、シーリング材、接着剤 | 内装・外装・補修費に影響 |
| 現場保護 | 養生シート、養生テープ、保護フィルム | 現場消耗品費が増えやすい |
| 輸送・保管 | 梱包フィルム、緩衝材、樹脂パレット | 資材配送・保管コストに影響 |
建材価格の高騰を考えるときは、柱や外壁材のような目立つ資材だけでなく、配管材、断熱材、防水材、接着剤、現場消耗品まで含めて見ることが大切です。
また、ナフサ不足は原油高とは影響の出方が異なります。
原油高は、重機燃料、軽油、配送費、電気代などに影響しやすい問題です。一方、ナフサ不足は建材や樹脂素材、現場資材に関係します。
原油高による燃料費や物流費の影響は、原油高で生活費がどうなるかをまとめた記事で確認してください。
この記事では、ナフサ由来の建材・樹脂素材への影響を中心に解説しています。
中小建設会社への経営ダメージ
ナフサ不足による建材価格の上昇は、中小建設会社にとって大きな負担になります。
大手企業に比べて仕入れ量が少なく、価格交渉力や在庫余力が限られるためです。
建設会社は、見積もりを出したあとに資材価格が上がることがあります。
契約内容によっては、上昇分をすぐに発注者へ転嫁できず、施工会社が差額を負担するケースもあるでしょう。
中小建設会社では、建材価格の上昇が利益率の低下や資金繰り悪化につながる場合があります。
特に、短期間で資材価格が変わる局面では、見積もりの有効期限、契約条件、価格改定条項、追加費用の説明が重要になります。
発注者側も、なぜ見積もりが変わるのかを理解しにくい場合があるため、丁寧な説明が欠かせません。
国土交通省は、資材価格の高騰などが顕在化した場合、契約前に通知した受注者が請負代金等の変更を協議できる仕組みを示しています。
建設資材の高騰分を適切に価格転嫁することは、現場技能者の賃金や工事品質を守るうえでも重要です。
ただし、価格転嫁は簡単ではありません。住宅購入者や施主にとっても予算上限があり、すべての上昇分を受け入れられるとは限らないためです。
その結果、中小建設会社ほど、利益を削って対応する場面が増えやすくなります。
参考:国土交通省・価格転嫁 第三次・担い手3法・国土交通省・建設業法・入契法改正について
住宅価格・不動産市場への波及
ナフサ不足による建材価格の上昇は、住宅価格や不動産市場にも波及する可能性があります。
新築住宅やリフォームでは、塩ビ管、断熱材、防水材、接着剤、塗料、住宅設備部材など、多くの資材が使われるためです。
建材費が上がると、建築会社や住宅メーカーの原価が増えます。
その分が販売価格やリフォーム見積もりに反映されれば、住宅購入者や施主の負担が増えることになります。
ナフサ不足は建材価格を通じて、新築住宅・リフォーム・住宅設備交換の費用に影響する可能性が高いです。
不動産市場への影響は、建材費だけで決まるわけではありません。
土地価格、金利、人件費、住宅ローン、人口動態、地域需要、住宅設備価格なども関係します。
そのため、ナフサ不足だけで住宅価格全体を説明するのは避けるべきです。
ただし、住宅価格が上がる局面では、建材費の上昇は無視できない要素になります。
特にリフォームでは、配管交換、断熱改修、防水工事、水回り設備交換など、樹脂素材や化学建材を使う工事が多くあります。
住宅購入やリフォームを検討している場合は、見積もりの有効期限、資材価格の変動、追加費用の条件、工期の見通しを確認しておくことが重要です。
価格だけでなく、どの資材が値上がりしているのかを聞くことで、納得感のある判断につながります。
住宅への詳しい影響は、ナフサ不足が住宅に与える影響を解説した記事でも詳しくまとめています。
建築・建設業への影響を正しく理解するには、ナフサ不足による建材・樹脂素材の問題と、原油高による燃料費・物流費の問題を分けて確認することが重要です。
ナフサ不足で影響を受けやすい建築資材一覧

ナフサ不足で影響を受けやすい建築資材は、合成樹脂やプラスチックを使う資材です。
建築・建設業では、塩ビ管、断熱材、防水材、接着剤、塗料、コーティング材、電線被覆、設備部材などに石油化学由来の素材が使われる場面があります。
ナフサは、原油を精製して得られる石油化学原料です。ナフサからエチレンやプロピレンなどの基礎化学品が作られ、それらが樹脂素材や化学建材につながります。
建築資材への影響を見るときは、木材や鉄鋼だけでなく、配管・断熱・防水・塗装・電気設備に使われる樹脂素材にも注目することが重要です。
| 資材の種類 | 主な例 | 影響の出方 |
|---|---|---|
| 合成樹脂・プラスチック製品 | 塩ビ管、樹脂配管、外装材、樹脂部材 | 配管工事・設備工事・外装工事の費用に影響 |
| 断熱材・防水材・接着剤 | 発泡系断熱材、防水シート、シーリング材、接着剤 | 住宅性能部材や補修材の価格に影響 |
| 塗料・コーティング材料 | 外壁塗料、防水塗料、床用塗料、保護コーティング | 外装・内装・補修工事の見積もりに影響 |
| 電線被覆・設備部材 | 電線の被覆材、ケーブルシース、樹脂カバー、設備部品 | 電気設備工事や住宅設備交換に影響 |
合成樹脂・プラスチック製品(配管・外装材など)
ナフサ不足で影響を受けやすい代表的な建築資材が、合成樹脂やプラスチック製品です。
建築・建設業では、塩ビ管、樹脂配管、継手、外装材、内装部材、樹脂サッシ、カバー材など、さまざまな場所で樹脂素材が使われています。
特に塩ビ管は、給排水設備や配管工事で広く使われる資材です。塩ビ樹脂の上流には、石油化学工業でナフサを主原料として作られるエチレンが関係します。
そのため、ナフサ価格や石油化学原料の供給が不安定になると、塩ビ系資材の価格にも影響が出やすくなります。
合成樹脂・プラスチック製品は、建物の目立つ部分だけでなく、配管や設備まわりの見えにくい部分にも使われているのです。
建設現場では塩ビ管や樹脂配管が不足すると、水回り工事や設備工事の工程に影響する場合があります。
単価が上がれば、リフォームや住宅設備交換の見積もりにも反映されやすくなります。
ただし、建材価格の上昇をナフサ不足だけで説明するのは正確ではありません。
木材、鋼材、設備機器、人件費、物流費、為替なども建設費に関係します。
ナフサ不足は、その中でも樹脂素材・化学建材に関わる要因として確認することが大切です。
ナフサ不足全体の原因や生活への影響は、ナフサ不足の原因と生活への影響をまとめた記事で詳しく解説しています。
住宅費用への影響はナフサ不足が住宅に与える影響を解説した記事も参考になります。
参考:石油化学工業協会・ナフサ分解工場・塩ビ工業・環境協会・塩ビ工業の概観
断熱材・防水材・接着剤
断熱材、防水材、接着剤も、ナフサ不足の影響を受けやすい建築資材です。
住宅や建物では、断熱性能、防水性能、気密性、補修性を確保するために、石油化学由来の素材を使う製品が多くあります。
断熱材では、発泡プラスチック系の素材が使われることがあります。
発泡スチロール協会は、発泡スチロールの原料がポリスチレンの粒であり、石油から作られたプラスチックの一種だと説明しています。
こうした発泡系素材は、住宅の断熱や建築資材の保護に関係する材料です。
断熱材や防水材は建物の性能を支える資材のため、価格上昇や納期遅れが工事全体に影響することがあります。
防水材や防水シートは、屋根、外壁、ベランダ、基礎まわりなどで使われます。
接着剤やシーリング材は、内装工事、外装工事、補修工事、設備まわりの施工に欠かせない資材です。
これらの資材は代替品を選べる場合もありますが、性能や施工条件が合わないと簡単には切り替えられません。防水性、断熱性、耐久性、施工性、保証条件が関係するためです。
リフォームや住宅購入を検討している場合は、見積もりの中で断熱材、防水材、シーリング材、接着剤などの価格や納期を確認しておくと安心です。
見えにくい資材ほど、あとから費用差がわかりにくい場合があります。
参考:発泡スチロール協会・発泡スチロールができるまで・石油化学工業協会・石油化学と合成樹脂
塗料・コーティング材料
塗料やコーティング材料も、ナフサ不足と関係する可能性がある資材です。
建築・建設業では、外壁塗料、防水塗料、床用塗料、金属保護用のコーティング材、内装仕上げ材などが使われます。
塗料は、色を付けるためだけのものではありません。
外壁や屋根を雨風や紫外線から守る、金属部材の劣化を抑える、防水性や耐久性を高めるなど、建物を長く使うための役割がある資材です。
塗料・コーティング材料の価格が上がると、外壁塗装、防水工事、補修工事、メンテナンス費用に影響する場合があります。
塗料には、樹脂、溶剤、添加剤など、石油化学素材と関係する成分が使われる場合があります。
そのため、ナフサ由来の化学原料や合成樹脂の価格が不安定になると、塗料メーカーや施工会社のコストにも影響する可能性が高いです。
特に、外壁塗装や防水工事は、住宅の維持費に関わる分野です。塗料価格だけでなく、足場代、人件費、施工時期、天候、保証内容も費用に影響します。
ナフサ不足はその中の一要因として見ておく必要があります。
なお、原油高による燃料費や配送費の上昇とは異なる影響ルートです。
原油高は塗料や資材の配送費、現場移動費、重機燃料などに影響しやすい問題です。一方、ナフサ不足は、塗料や樹脂成分などの材料側に関係します。
原油高による生活費や物流費の影響は、原油高で生活費がどうなるかをまとめた記事で確認しましょう。
この記事では、建材や石油化学素材への影響を中心に整理しています。
電線被覆や設備部材
電線被覆や設備部材も、ナフサ不足の影響を受ける可能性があります。
建築物では、電気配線、照明設備、空調設備、給排水設備、住宅設備など、さまざまな場所で樹脂部材や被覆材が使われています。
電線は、中心の導体だけでなく、外側を守る被覆材も重要です。被覆材には、塩ビやポリエチレンなどの樹脂素材が使われることがあります。
これらは、電線の安全性や耐久性を支える役割がある素材です。
電線被覆や設備部材は建物の安全性や機能を支えるため、樹脂素材の供給不安が工事や交換費用に影響する場合があります。
設備部材では、樹脂カバー、パッキン、ホース、配線部材、配管部材、保護材、外装カバーなどが関係します。
これらは単価が目立ちにくいですが、住宅設備や建築設備では数多く使われる部材です。
電気設備工事や住宅設備交換では、部材の納期が工期に影響することもあります。
たとえば、配線部材や設備部品の納期が遅れると、内装仕上げや機器設置の工程を調整しなければなりません。
ただし、電線や設備部材の価格は、銅、アルミ、電子部品、人件費、物流費などにも左右されます。
ナフサ不足だけで価格変動を説明するのではなく、被覆材や樹脂部品に関係する要因として整理するのが正確です。
設備資材や梱包材への影響は、ナフサ不足が物流に与える影響を解説した記事でも確認できます。
参考:塩ビ工業・環境協会・日本電線工業会の電線の今と未来をつくる取り組み・塩ビ工業・環境協会・分野別塩ビ製品紹介
建築資材の値上がりを確認するときの注意点
ナフサ不足で影響を受けやすい建築資材は多くありますが、すべての建材価格上昇がナフサ不足だけで起きるわけではありません。
建築費には、木材、鉄鋼、セメント、住宅設備、電気部品、人件費、物流費、為替、金利なども関係します。
そのため、建築資材の値上がりを見るときはナフサ由来の樹脂素材と、原油高による燃料費・物流費を分けて考えることが大切です。
ナフサ不足は建材や樹脂素材への影響、原油高は重機燃料や配送費への影響として整理すると、価格上昇の理由を理解しやすくなります。
ナフサ不足で影響を受けやすい建築資材は、塩ビ管、断熱材、防水材、接着剤、塗料、電線被覆、設備部材などです。
見積もりでは、材料費・納期・代替品の有無を確認することが重要です。
ナフサ価格と建材価格の実態データ(2024〜2026)
ナフサ不足による建築・建設業への影響を考えるときは、感覚だけでなく、価格データを見ることが重要です。
特に確認したいのは、ナフサ価格の動きと建設資材価格の動きです。
ただし、ナフサ価格が上がったからといって、建材価格が同じタイミングで同じ幅だけ上がるわけではありません。
建材価格には、ナフサ由来の樹脂素材だけでなく木材、鉄鋼、セメント、電線、物流費、人件費、為替なども関係します。
ナフサ価格は樹脂素材や化学建材の上流コスト、建設資材物価指数は建設現場で使う資材価格の実態を見るための指標です。
| 見るデータ | 確認できること | 建設業での意味 |
|---|---|---|
| ナフサ価格 | 石油化学原料の上流コスト | 樹脂素材・化学建材の価格に関係 |
| 建設資材物価指数 | 建設資材全体の価格動向 | 見積もり・工事費・資材調達に関係 |
| 化学製品・プラスチック製品 | 塗料・樹脂製品などの価格傾向 | 塗装、防水、配管、養生材に関係 |
| 非鉄金属・電線類 | 電線・設備部材の価格傾向 | 電気設備工事や住宅設備交換に関係 |
2024〜2026年のナフサ価格は高止まりと急変動が目立つ
2024年から2026年にかけて、ナフサ価格は高止まりと変動の大きさが目立ちます。
ナフサは原油由来の石油化学原料であり、原油価格、為替、中東情勢、輸入コストの影響を受けます。
財務省貿易統計をもとにした国産ナフサ価格の集計では、2024年はおおむね7万円台前後で推移し、2025年は6万円台まで下がる局面がありました。
一方、2026年は春以降に大きく上振れする月があり、価格変動リスクが再び意識されています。
ナフサ価格は、建材に使われる樹脂素材や化学原料の上流コストとして確認したいデータです。
| 時期 | ナフサ価格の傾向 | 建築・建設業で見たいポイント |
|---|---|---|
| 2024年 | 7万円台前後で高止まりしやすい局面 | 樹脂系建材・包装材・化学製品のコスト上昇 |
| 2025年 | 6万円台へ下がる月もあるが、円安や原料費の影響は残る | 価格が下がっても建材価格へすぐ反映されるとは限らない |
| 2026年 | 春以降に急変動する月があり、調達不安が意識されやすい | 見積もり有効期限・資材納期・価格改定の確認が重要 |
ここで注意したいのは、ナフサ価格と建材価格は完全に連動しないという点です。
ナフサは上流原料であり、実際の建材価格には、加工費、メーカー在庫、契約条件、輸送費、販売価格改定のタイミングなどが加わります。
たとえば、ナフサ価格が一時的に下がっても、塩ビ管、断熱材、防水材、塗料、接着剤などの店頭価格や見積もり価格がすぐに下がるとは限りません。
逆に、ナフサ価格が上がった場合も、既存在庫や契約価格によって建設現場への影響が遅れて出ることがあります。
参考:三協化学・国産ナフサ価格更新・財務省貿易統計・最新の貿易統計
建設資材価格は2026年も高止まりしている
建設資材価格の実態を見るには、建設資材物価指数が参考になります。
建設物価調査会の建設資材物価指数は、建設工事で使用される資材の総合的な価格動向を把握するための指数です。
2026年5月の東京の建設資材物価指数では、建設総合が147.5、建築部門が145.1、建築補修が142.0、土木部門が155.2と公表されています。
基準年である2015年を100とする指数のため、建設資材価格が長期的に大きく上がっていることがわかります。
2026年時点でも、建設資材価格は2015年比で高い水準にあり、新築・リフォーム・補修工事の費用に影響しやすい状況です。
| 指数項目 | 2026年5月・東京 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| 建設総合 | 147.5 | 建設資材全体が2015年比で高い水準 |
| 建築部門 | 145.1 | 住宅・建築向け資材の高止まりを示す |
| 建築補修 | 142.0 | リフォーム・改修資材も高い水準 |
| 土木部門 | 155.2 | 土木資材はさらに高い水準 |
建設資材物価指数は、燃料やサービス料金を除いて計算されています。
つまり、重機燃料、電気代、機械賃貸、修理費などではなく、建設工事で直接使う資材の価格動向を見るための指標です。
原油高は、軽油代、配送費、電気代などの燃料・エネルギーコストに影響しやすい問題です。
一方、ナフサ不足は、塩ビ管、断熱材、防水材、接着剤、塗料、養生材などの建材・樹脂素材に関係します。
原油高による燃料費や生活費への影響は、原油高で生活費がどうなるかをまとめた記事で確認しましょう。
この記事では、ナフサ由来の建材・化学素材への影響に絞って見ていきます。
ナフサ価格と建材価格は同じタイミングで動くわけではない
ナフサ価格と建材価格を比べるときは、時間差に注意が必要です。
ナフサは石油化学原料の上流にあるため、価格変動が最終的な建材価格へ反映されるまでには、製造、在庫、契約、流通、施工会社の見積もりを経由します。
たとえば、ナフサ価格が上がると樹脂原料や化学製品のコストに影響します。
その後、塩ビ管、断熱材、防水材、接着剤、塗料、養生材などの建材価格へ反映されるケースが一般的です。
ナフサ価格は「上流の原料価格」、建材価格は「現場で使う資材価格」です。両者は関係しますが、同時に同じ幅で動くわけではありません。
建材メーカーや商社は、在庫や仕入れ契約を持っています。そのため、原料価格が上がっても、すぐに価格改定される場合と、数カ月遅れて反映される場合があります。
逆に、原料価格が下がっても、すぐに建材価格が下がるとは限りません。
住宅購入やリフォームを検討している人にとって重要なのは、ナフサ価格そのものよりも、見積もりの中でどの資材が値上がりしているかです。
配管材、断熱材、防水材、塗料、接着剤、電線被覆、養生材などは、ナフサ由来素材と関係する可能性があります。
住宅費用への具体的な影響は、ナフサ不足が住宅に与える影響を解説した記事でも詳しくまとめています。
2024〜2026年のデータから見える建設業への注意点
2024〜2026年のデータを見ると、ナフサ価格は上下しながらも変動リスクが残り、建設資材価格は高い水準が続いています。
建築・建設業では、この2つを分けて確認することが重要です。
ナフサ価格は、樹脂素材や化学建材の上流コストを示します。
一方、建設資材物価指数は、建設現場で実際に使う資材価格の動きを示します。どちらか一方だけを見ると、現場の負担を正確に把握しにくくなります。
建設業では、ナフサ価格の変動と建設資材価格の高止まりを分けて見ながら、見積もり・納期・価格転嫁を確認する必要があります。
| 確認項目 | なぜ重要か | 確認する場面 |
|---|---|---|
| 見積もり有効期限 | 資材価格が変わると再見積もりになる場合がある | 新築・リフォーム契約前 |
| 資材納期 | 配管・断熱・防水材の遅れが工期に影響する | 着工前・工程確認時 |
| 価格改定の予定 | メーカー改定が見積もりに反映されることがある | 契約前・仕様変更時 |
| 代替資材の可否 | 性能・保証・規格が合わないと変更できない | 資材不足・納期遅れの発生時 |
中小建設会社では、資材価格の上昇分をすぐに価格転嫁できない場合があります。
見積もり後に資材が上がると、利益率が下がったり、追加費用の説明が必要になったりします。
発注者側も、単に「値上げされた」と受け止めるのではなく、どの資材が、いつ、どの程度変わったのかを確認することが大切です。
建材価格の高止まりが続く局面では、見積もりの内訳と有効期限を確認するだけでも、後のトラブルを減らしやすくなります。
2024〜2026年のデータを見ると、ナフサ価格は変動リスクが残り、建設資材価格は高水準が続いています。
建設費への影響を判断するには、ナフサ価格と建材価格を分けて確認することが重要です。
ナフサ不足の建設現場で「実際に起きている問題」

ナフサ不足の影響は、建設現場では「資材が高くなる」だけでは終わりません。
見積もりの再調整、資材の納期遅れ、代替品の確認、利益率の低下、施主への説明負担など、現場運営そのものに影響します。
特に関係しやすいのは、塩ビ管、樹脂配管、断熱材、防水材、接着剤、塗料、シーリング材、養生シート、梱包フィルムなどの石油化学由来資材です。
ナフサ不足は、建設現場では資材費・納期・見積もり・利益率に影響する「現場コストの問題」として表れます。
| 現場で起きやすい問題 | 関係する資材例 | 具体的な影響 |
|---|---|---|
| 見積もり後の原価上昇 | 塩ビ管、断熱材、防水材、塗料 | 利益率低下、再見積もり、追加説明 |
| 資材の納期遅れ | 樹脂配管、接着剤、シーリング材 | 工程変更、職人手配のやり直し |
| 代替品の確認負担 | 防水材、断熱材、塗料、設備部材 | 性能・保証・規格の確認が必要 |
| 現場消耗品の負担増 | 養生シート、テープ、梱包材 | 小さなコスト増が積み重なる |
| 施主への説明負担 | 資材全般 | 値上げ理由や納期変更の説明が必要 |
見積もり後に資材価格が変わる
建設現場で起きやすい問題の一つが、見積もり後の資材価格上昇です。
建設工事では、見積もりを出してから契約、発注、着工、資材納入までに時間が空くことがあります。
その間に建材価格が上がると、当初の原価計算が崩れやすくなります。
ナフサ由来素材と関係しやすいのは、塩ビ管、断熱材、防水材、接着剤、塗料、シーリング材、養生材などです。
これらは単体では目立ちにくい資材ですが現場では広く使われるため、価格上昇が積み重なると工事原価に影響します。
見積もり後の資材高騰は、施工会社の利益率を下げたり、施主への再説明が必要になったりする問題です。
特に中小建設会社では、大量仕入れや長期在庫で価格変動を吸収しにくい場合があります。
見積もり時点では採算が合っていても、着工前後に資材価格が変われば利益を削って対応するケースも出てくるでしょう。
国土交通省は、資材価格の高騰や資材不足といったリスクが受注者に偏り、適正な価格転嫁が行われにくい問題を踏まえ、資材高騰時の請負代金等の変更方法や協議について制度面で整理しています。
建設現場では、契約前に価格変動リスクを確認しておくことが重要です。
資材の納期遅れで工程がずれる
ナフサ不足や石油化学原料の供給不安は、資材の納期にも影響する場合があります。
建設現場では、必要な資材が予定どおり入らないと次の工程に進めない可能性が高いです。
たとえば、配管材が遅れれば水回り工事が進みにくくなります。
防水材が入らなければ外装や内装の工程に影響し、接着剤やシーリング材、塗料が不足すれば仕上げや補修の作業日程も変わります。
建設現場ではひとつの資材の納期遅れが、職人手配・工程表・引き渡し時期にまで広がることがあるのです。
工期がずれると、職人や協力会社の再手配が必要になります。
予定していた作業日が空けば、現場全体の効率も下がるでしょう。複数の現場を抱える建設会社では、ひとつの遅れが別の現場の段取りにも影響する場合があります。
ただし、工期遅延の原因をナフサ不足だけに限定するのは正確ではありません。
人手不足、天候、住宅設備の納期、輸入資材、物流混乱なども関係します。
ナフサ不足は、その中でも樹脂系建材や化学建材の調達リスクとして見ることが大切です。
梱包材や物流資材への影響は、ナフサ不足が物流に与える影響を解説した記事でも確認できます。
代替資材を使うにも確認作業が増える
資材が高くなったり、予定どおり入らなかったりした場合、代替資材を検討することがあります。
しかし、建設現場では、別の商品にすぐ切り替えられるとは限りません。
断熱材、防水材、塗料、接着剤、シーリング材、配管材などは、性能、規格、施工方法、耐久性、保証条件が関係します。
価格が安い代替品があっても、設計仕様やメーカー保証に合わなければ使えない場合があります。
建設現場の代替資材は、価格だけでなく性能・規格・保証・施工性まで確認することが重要です。
たとえば、防水材を変更する場合は下地との相性や施工方法、耐用年数を確認しなければなりません。
塗料を変える場合も、外壁材との相性、耐候性、保証条件が関係します。
配管材や電線被覆などの設備部材では、法令や規格への適合も重要です。
そのため、代替資材の確認には、施工会社、設計者、メーカー、発注者の調整が必要になります。
価格上昇を抑えるための変更であっても、確認作業が増えることで現場管理の負担が大きくなる場合があります。
現場消耗品の値上がりが積み重なる
ナフサ不足の影響は、主要建材だけでなく、現場消耗品にも表れます。
養生シート、養生テープ、保護フィルム、梱包材、緩衝材、樹脂袋、使い捨て資材などは、石油化学素材と関係するものが多いです。
こうした消耗品は、ひとつひとつの単価が大きくないため、見落とされやすい資材です。
しかし、建設現場では大量に使うため、価格が少し上がるだけでも現場全体では無視できない負担になります。
現場消耗品の値上がりは目立ちにくいものの、複数の現場で積み重なると利益を圧迫します。
特にリフォームや内装工事では、養生材を多く使います。既存の床や壁、設備を傷つけないために必要な資材であり、単純に減らせばよいものではありません。
品質を落とすと、施工後のトラブルにつながる可能性もあります。
そのため、建設会社は必要な品質を保ちながら、資材の使い方や発注ロット、在庫管理の見直しが必要です。
ナフサ不足は、目立つ建材だけでなく、こうした現場管理の細部にも影響します。
施主や元請けへの説明が難しくなる
ナフサ不足による建材価格の上昇は、発注者への説明にも影響します。
施主や元請けから見ると、「なぜ見積もりが上がったのか」「なぜ前回と金額が違うのか」がわかりにくいためです。
建設費の上昇には、ナフサ不足だけでなく、木材、鋼材、セメント、住宅設備、人件費、物流費、為替、電気代など多くの要因があります。
その中でナフサ不足は、塩ビ管、断熱材、防水材、接着剤、塗料、養生材などの樹脂系・化学系資材に関わる要因です。
価格上昇を説明するときは、ナフサ不足による建材費の問題と、原油高による燃料費・物流費の問題を分けて伝えることが重要です。
原油高は、重機燃料、配送費、電気代、現場移動費などに影響しやすい問題です。
一方、ナフサ不足は、樹脂素材や化学建材、現場消耗品のコストに影響します。この違いを整理すると、発注者も値上がりの理由を理解しやすくなります。
原油高による生活費や燃料費への影響は原油高で生活費がどうなるかをまとめた記事で確認してください。
ナフサ不足全体の背景はナフサ不足の原因と生活への影響をまとめた記事で詳しく解説しています。
建設会社の資金繰りにも影響する
ナフサ不足による資材価格の上昇は、建設会社の資金繰りにも影響します。
建設業では、資材費や外注費を先に支払い、工事代金を後から回収するケースがあります。
そのため、原価が急に上がると手元資金への負担が大きくなるでしょう。
特に中小建設会社では、資材の一括購入や在庫確保に使える資金が限られることがあります。
仕入れ価格が上がれば、同じ工事を受けるために必要な運転資金も増えます。
建材価格の上昇は利益率だけでなく、建設会社の運転資金や資金繰りにも影響する問題です。
また、価格改定を発注者に認めてもらうまでに時間がかかる場合もあります。
追加費用の説明、契約変更、協議、再見積もりが必要になると、事務負担も増えます。
こうした状況では、見積もりの有効期限を短めに設定する、価格変動時の条件を明記する、資材の納期を早めに確認する、代替資材の候補を事前に用意するなどの対応が重要です。
住宅購入者・リフォーム検討者にも影響が出る
建設現場で起きている問題は、最終的に住宅購入者やリフォーム検討者にも関係します。
建材価格の上昇や資材納期の遅れは、新築住宅、リフォーム、設備交換、外壁塗装、防水工事などの費用や日程に影響するためです。
たとえば、リフォームの見積もりでは、配管材、断熱材、防水材、塗料、接着剤、養生材、設備部材などの価格が関係します。これらの資材が上がれば、工事費も上がりやすくなります。
住宅購入やリフォームでは、総額だけでなく、見積もり有効期限、資材納期、価格改定の可能性を確認することが大切です。
特に、契約から着工まで時間が空く場合は注意が必要です。
見積もり時点では反映されていなかった資材価格の上昇が、後から追加費用や仕様変更として出てくる場合があります。
住宅分野への詳しい影響は、ナフサ不足が住宅に与える影響を解説した記事で確認できます。
ナフサ不足が建設現場で起こす問題は、建材費の上昇だけではありません。
納期、工程、代替資材、価格転嫁、資金繰り、施主説明まで含めて確認することが重要です。
企業事例|ナフサ不足が実際に建設・素材業界へ与えた影響
ナフサ不足や石油化学原料の供給不安は、建設業界だけでなく、上流の石油化学メーカー、建材メーカー、内装材メーカー、施工会社まで広がる問題です。
ただし、企業が「ナフサ不足だけが原因」と説明するケースは多くありません。
実際には、中東情勢、原油・ナフサ価格、原材料費、製造コスト、物流コスト、円安、国内設備再編など、複数の要因が重なって影響します。
建設・素材業界への影響は、石油化学メーカーの生産体制、建材メーカーの価格改定、建設現場の納期・工程管理、中小建設会社の価格転嫁に分けて見ることが重要です。
| 業種 | 起きやすい影響 | 建設業へのつながり |
|---|---|---|
| 石油化学メーカー | エチレン設備の再編、生産体制の最適化 | 樹脂原料・化学建材の供給体制に影響 |
| 建材・内装材メーカー | 原材料高、供給不安、価格改定 | 壁装材、床材、副資材、接着剤などに影響 |
| 施工会社・建設現場 | 納期変更、代替材確認、工程調整 | 工期・職人手配・引き渡し時期に影響 |
| 中小建設会社 | 価格転嫁の遅れ、利益率低下、資金繰り負担 | 見積もり変更・契約協議が重要になる |
ナフサ不足の影響比較(業種別)
ナフサ不足の影響は、業種によって表れ方が異なります。
石油化学メーカーでは、ナフサから作るエチレンやプロピレンなどの基礎化学品の生産体制が問題になります。
建材メーカーでは、樹脂素材や副資材の調達コスト、内装材や接着剤の価格改定が課題です。
建設会社では、建材価格の上昇そのものに加えて、納期変更、工程調整、代替材の確認、施主への説明が必要になるでしょう。
中小建設会社では、資材高騰分をすぐに価格転嫁できない場合、利益率や資金繰りにも影響します。
同じナフサ不足でも、上流では生産体制、中流では建材価格、下流では工期・見積もり・利益率の問題として表れます。
| 業種 | 具体的な影響 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 石油化学メーカー | エチレン設備の統合・停止・生産最適化 | 基礎化学品の供給体制 |
| 素材メーカー | 樹脂・化学原料の価格変動、供給調整 | 樹脂原料・二次加工品の動き |
| 建材メーカー | 壁装材、床材、副資材、接着剤などの値上げ | 価格改定日・対象商品・値上げ幅 |
| 施工会社 | 納期変更、代替材確認、工程調整 | 工期・資材納入・保証条件 |
| 中小建設会社 | 価格転嫁の遅れ、利益圧迫 | 見積もり有効期限・契約条件 |
石油化学メーカーの減産と供給調整
石油化学メーカーでは、ナフサから作られるエチレンなどの基礎化学品の生産体制が見直されています。
エチレンは、ポリエチレン、塩ビ樹脂、合成樹脂、フィルム、接着剤、塗料原料などにつながる重要な基礎素材です。
旭化成、三井化学、三菱ケミカルは、2026年1月に西日本におけるエチレン製造設備の生産体制最適化とグリーン化に向けた基本契約を締結したと発表しています。
発表では、2030年度をめどに三菱ケミカル旭化成エチレン水島工場のエチレン製造設備を停止し、大阪石油化学泉北工業所の設備へ集約する方針が示されています。
石油化学メーカーの設備再編は、国内のエチレン供給体制そのものを変える動きです。
同発表では、統合前のエチレン生産能力が95.1万トン/年、統合後が45.5万トン/年とされています。
これは単なる一時的な減産ではなく、需要構造の変化、設備の効率化、脱炭素対応、事業競争力の再構築を含む中長期の再編です。
建設業への影響は、すぐに「建材がなくなる」という形で出るとは限りません。ただし、エチレンは塩ビ管、樹脂素材、フィルム、接着剤、塗料原料などにつながる基礎化学品です。
上流の生産体制が変われば、将来的な供給、価格、調達先の考え方にも影響します。
ナフサ不足全体の背景は、ナフサ不足の原因と生活への影響をまとめた記事で詳しく解説しています。
参考:三井化学・旭化成、三井化学、三菱ケミカル 西日本エチレン生産体制のグリーン化推進に向けた基本契約締結
建材メーカーにおける値上げと仕様・代替材の見直し
建材メーカーや内装材メーカーでは、原材料価格の上昇や供給不安を背景に価格改定の動きが出ています。
特に、壁装材、床材、副資材、接着剤、ファブリック、エクステリアなどは、樹脂素材や化学原料、物流コストの影響を受けやすい分野です。
サンゲツは2026年4月、取引価格改定について発表しました。
発表では、中東情勢の緊迫化を背景に、原油、ナフサをはじめとする石油化学原料の指標が大幅に上昇し、サプライチェーンの混乱が長期化していると説明しています。
同社の価格改定では、2026年7月1日受注分から壁装材、床材、ファブリック、エクステリア、副資材、接着剤などを対象に、18〜30%程度の値上げ幅が示されています。
建材メーカーの価格改定は、ナフサ不足や石油化学原料の上昇が内装材・床材・副資材・接着剤に波及していることを示す具体例です。
また、アイカ工業のIR質疑応答では、建装建材セグメントにもコスト影響が出始めていることや、不採算是正や老朽化対策のコスト上昇も含むと説明されています。
この説明は、建材価格を見るうえで重要です。ナフサ価格が上下しても、建材価格が同じタイミングで同じ幅だけ動くわけではありません。
二次加工品、メーカーの設備維持、円安、物流費、在庫、価格改定タイミングが重なるためです。
そのため、建設会社や施主は、単に「ナフサ価格が下がったから建材も安くなる」と考えるのではなく、各メーカーの価格改定日、対象商品、納期、代替品の有無を確認する必要があります。
住宅向けの詳しい影響は、ナフサ不足が住宅に与える影響を解説した記事でも確認できます。
参考:サンゲツ・取引価格改定に関するお知らせ・アイカ工業・2025年3月期第2四半期 決算説明会 質疑応答
建設現場での納期遅延と工程調整の実例
建設現場で特に問題になりやすいのが、資材の納期遅延です。
ナフサ由来素材や石化製品の供給が不安定になると、壁装材、床材、接着剤、防水材、養生材、塩ビ管、樹脂部材などの納入時期が読めない可能性が高いです。
サンゲツは2026年3月に、中東情勢の緊迫化に伴う商品供給への影響について案内しています。
そこでは、国内の石化製品の供給不安を背景に、製造委託先で原材料の調達に支障が出つつあること、今後の情勢によっては商品供給量の減少・制限、納期の変更・遅延、販売価格の改定等が発生する可能性があると説明しています。
建設現場では、建材の納期変更が工程表・職人手配・引き渡し時期に影響することがあるのです。
たとえば、床材や壁装材の納期が遅れれば、内装仕上げの工程が後ろ倒しになります。
接着剤や副資材が揃わなければ、施工そのものが進められない場合もあるでしょう。
防水材やシーリング材の納期がずれれば、外装工事や補修工事の段取りにも影響します。
代替品を使う場合も、簡単には決められません。
建設現場では、見た目だけでなく、性能、規格、施工方法、保証条件、メーカー指定の組み合わせが関係します。
安い代替品があっても、設計や保証に合わなければ使えないことがあります。
このような納期遅延や工程調整は、建設会社だけの問題ではありません。
住宅購入者やリフォーム検討者にとっても、引き渡し時期、仮住まい期間、追加費用、仕様変更の判断に関わります。
物流資材や梱包材への影響は、ナフサ不足が物流に与える影響を解説した記事でも確認できます。
参考:サンゲツ・中東情勢の緊迫化に伴う商品供給への影響について
中小建設企業への影響の集中
ナフサ不足や建材価格の上昇は、中小建設企業に影響が集中しやすい問題です。
大手に比べて仕入れ量が少なく、価格交渉力や在庫余力が限られるため、資材高騰を吸収しにくい傾向があります。
中小建設会社では、見積もりを出したあとに建材価格が上がると、利益率が下がる場合があります。
契約内容によっては、上昇分をすぐに施主や元請けに転嫁できず、施工会社が負担することもあるでしょう。
中小建設企業にとって、ナフサ不足は建材価格の問題であると同時に、価格転嫁・資金繰り・契約管理の問題です。
国土交通省は、資材価格の高騰分の転嫁協議を円滑にするため、資材価格高騰のおそれを受注者が認識している場合には、注文者に「おそれ情報」を通知する義務があると説明しています。
また、資材価格の高騰等が顕在化した場合、契約前に通知した受注者は、注文者に請負代金等の変更を協議できるとしています。
これは、資材価格の上昇を建設会社だけが抱え込まないための重要な仕組みです。
建材価格が上がる局面では、見積もりの有効期限、価格改定時の協議方法、追加費用の扱いを契約前に確認しておく必要があります。
ただし、価格転嫁は実務上簡単ではありません。施主や元請けにも予算があり、すべての上昇分をすぐに受け入れられるとは限らないためです。
そのため、中小建設会社ほど、原価管理、在庫管理、早めの説明、契約条件の明確化が重要になります。
企業事例から見える建設業への注意点
企業事例を見ると、ナフサ不足の影響は石油化学メーカー、素材メーカー、建材メーカー、施工会社、中小建設企業へ段階的に広がることがわかります。
上流では、エチレン設備の再編や生産体制の最適化が進んでいます。
中流では、内装材や接着剤などの価格改定、原材料調達の不安定化が起きている状況です。
下流では、納期変更、工程調整、価格転嫁、施主説明が課題になります。
ナフサ不足が建設・素材業界へ与える影響は、単なる建材値上げではありません。
生産体制、供給量、納期、価格転嫁、現場工程まで含めて確認することが重要です。
ナフサ不足の影響を受けている主な企業・業界動向
ナフサ不足や石油化学原料の供給不安は、建設業だけで完結する問題ではありません。
上流の石油化学メーカー、建材・住宅設備メーカー、塗料・化学資材メーカー、施工会社へ段階的に影響します。
建設業への影響を正しく見るには、上流の石油化学メーカー、中流の建材・住宅設備メーカー、現場に近い塗料・化学資材メーカーの動きを分けて確認することが重要です。
| 業界 | 主な動き | 建設現場への影響 |
|---|---|---|
| 石油化学メーカー | エチレン設備の集約・生産体制の最適化 | 樹脂原料・化学建材の供給体制に関係 |
| 建材・住宅設備メーカー | 原材料・購入資材・部品・物流費の上昇による価格改定 | 新築・リフォーム・設備交換費用に影響 |
| 塗料・化学資材メーカー | 塗料、シンナー、副資材の価格改定・出荷調整 | 外壁塗装、防水工事、補修工事の費用や納期に影響 |
石油化学メーカー|エチレン設備の再編が進んでいる
石油化学メーカーでは、ナフサから作られるエチレンなどの基礎化学品の生産体制が見直されています。
エチレンは、塩ビ樹脂、ポリエチレン、フィルム、接着剤、塗料原料などにつながる重要な基礎素材です。
旭化成、三井化学、三菱ケミカルは、西日本にあるエチレン製造設備の生産体制最適化とグリーン化に向けた基本契約を発表しています。
2030年度をめどに、三菱ケミカル旭化成エチレン水島工場のエチレン製造設備を停止し、大阪石油化学泉北工業所の設備へ集約する方針です。
石油化学メーカーの設備再編は、ナフサ不足そのものだけでなく、国内の樹脂原料・基礎化学品の供給体制に関わる動きです。
この動きは、すぐに建材不足を意味するものではありません。
ただし、エチレンは塩ビ管、樹脂配管、防水材、フィルム、接着剤、塗料原料などの上流に位置する素材です。
上流の生産体制が変われば、将来的な価格、調達先、供給安定性にも影響する可能性があります。
建設業としては、石油化学メーカーの再編を「遠い業界の話」と見ないことが大切です。
建設現場で使う塩ビ管、断熱材、防水材、接着剤、養生材などは、上流の石油化学素材とつながっています。
ナフサ不足全体の背景は、ナフサ不足の原因と生活への影響をまとめた記事で詳しく解説しています。
参考:旭化成・西日本エチレン生産体制のグリーン化推進に向けた基本契約締結・三井化学・旭化成、三井化学、三菱ケミカル 西日本エチレン生産体制のグリーン化推進
建材・住宅設備メーカー|価格改定と部材コスト上昇が続く
建材・住宅設備メーカーでは、原材料、購入資材、部品、物流費などの高騰を背景に価格改定の動きが続いています。
住宅設備は、金属やガラスだけでなく樹脂部材、配管部材、断熱材、接着剤、梱包材など、多くの素材を組み合わせて作られます。
LIXILは、建材・設備機器の一部についてメーカー希望小売価格を改定すると発表しました。
発表では、原材料、購入資材、部品、物流費などの高騰が続き、企業努力だけでは対応が困難な状況であると説明しています。
パナソニック空質空調社も、住宅設備用エアコンの一部商品・部材について価格改定を実施すると案内しています。
理由として、原材料価格や物流関連費用の高騰を背景に、部品・部材の調達費用が上昇していることを挙げました。
建材・住宅設備メーカーの価格改定は、住宅価格やリフォーム費用に反映されやすい重要な業界動向です。
TOTOの統合報告書でも、日本住設事業において外部調達コストの増加が続く中、価格改定の効果や高付加価値商品の拡販が業績計画の要素として示されています。
住宅設備メーカーにとって、原材料や部材の高騰は一時的な問題ではなく、収益性や販売価格に関わるテーマです。
住宅への具体的な影響は、ナフサ不足が住宅に与える影響を解説した記事でも詳しくまとめています。
参考:LIXIL・建材・設備機器のメーカー希望小売価格の一部改定について・パナソニック・住宅設備用エアコンの価格改定について・TOTO・統合報告書2025 日本住設事業
塗料・化学資材メーカー|塗料・シンナー・副資材に影響が出ている
塗料・化学資材メーカーでは、中東情勢、原油・石油化学製品、原材料調達、物流費の影響がより直接的に表れています。
外壁塗装、防水工事、床塗装、補修工事では、塗料、シンナー、接着剤、シーリング材などの化学資材が欠かせません。
日本ペイントは、中東情勢の影響により市場環境が不安定な状況が続き、原油価格や物流動向、各種原材料の調達環境が不安定であること、塗料製品の原材料価格と調達物流費用の急騰が継続していることを理由に、塗料類全般の価格改定を発表しています。
同社の発表では、2026年6月1日出荷分から、溶剤系塗料で25〜35%、水性塗料で20〜30%の価格改定率が示されました。
さらに、シンナー製品については、現行価格より75%の値上げによる価格改定が案内されています。
塗料・化学資材の価格改定は、外壁塗装、防水工事、補修工事、内装仕上げの見積もりに与える影響が大きいです。
関西ペイントも、中東地域の緊張を背景に、原油・石油化学製品をはじめとする原材料市場や国際物流を取り巻く環境が不安定であると説明しています。
シンナー製品では出荷統制と価格改定を案内し、その後、塗料製品についても溶剤系塗料、水性塗料、粉体系塗料の価格改定を発表している状況です。
建設現場では、塗料やシンナーが不足したり、価格が上がったりすると、外壁塗装、防水工事、床塗装、補修作業の工程に影響する場合があります。
代替品を使う場合でも、下地との相性、施工方法、耐久性、保証条件を確認しなければなりません。
参考:日本ペイント・中東情勢に伴う当社製品の価格改定について・関西ペイント・シンナー製品の出荷統制および価格改定に関するご案内・関西ペイント・塗料製品の価格改定に関するご案内
業界動向から見える建設会社・施主側の注意点
石油化学メーカー、建材・住宅設備メーカー、塗料・化学資材メーカーの動きを見ると、建設現場への影響は「単なる建材値上げ」だけではないことがわかります。
上流の生産体制、部材調達、価格改定、出荷調整、納期変更が重なり、工事費や工程に波及します。
建設会社は、見積もり時点で価格改定の予定、資材納期、代替品の可否を確認しておくことが重要です。
特に中小建設会社では、資材高騰分をすぐに価格転嫁できない場合、利益率や資金繰りへの影響が大きくなります。
施主や住宅購入者も、総額だけで判断せず、見積もりの有効期限、価格改定予定、資材の納期、仕様変更の条件を確認することが大切です。
リフォームや外壁塗装では、塗料、防水材、接着剤、シーリング材、養生材などの価格が工事費に影響します。
ナフサ不足の業界動向を見るときは、石油化学メーカーの生産体制、建材・住宅設備メーカーの価格改定、塗料・化学資材メーカーの供給対応を分けて確認することが重要です。
なぜ建設業だけ影響が大きいのか

ナフサ不足は食品や日用品にも影響しますが、建設業では影響が大きく見えやすい傾向があります。
理由は、建設業が多くの業者・資材・工程で成り立つ産業だからです。
建設現場では、塩ビ管、断熱材、防水材、接着剤、塗料、シーリング材、養生材、梱包材など、ナフサ由来の石油化学素材を使う資材が幅広く使われます。
ひとつの資材が値上がりしたり、納期が遅れたりすると、工事全体の原価や工程に影響する場合があります。
建設業でナフサ不足の影響が大きくなりやすいのは、多層サプライチェーン、現場ごとの仕様差、厳しい工期制約が重なっているためです。
| 影響が大きい理由 | 建設業で起きやすいこと | ナフサ不足との関係 |
|---|---|---|
| 多層サプライチェーン | メーカー、商社、問屋、元請け、下請けが関わる | 上流の原料高が現場原価へ遅れて波及する |
| 現場ごとの仕様差 | 物件ごとに資材・規格・施工方法が変わる | 代替資材をすぐに使えない場合がある |
| 工期制約 | 資材遅れが職人手配や引き渡しに影響する | 樹脂系資材の納期遅れが工程全体に広がる |
多層サプライチェーン構造
建設業でナフサ不足の影響が大きくなりやすい理由の一つは、サプライチェーンが多層になっていることです。
ナフサから作られる化学原料は、素材メーカー、建材メーカー、商社、問屋、元請け、下請け、施工会社を経て、建設現場で使われます。
たとえば、塩ビ管や断熱材、防水材、接着剤、塗料、養生材などは、上流の石油化学原料と関係します。
ナフサ価格や樹脂原料の価格が上がっても、建設現場に届くまでには、製造、加工、流通、在庫、契約価格、見積もりの段階を通るのです。
建設業では、上流の原料高が、建材価格や見積もり原価に時間差で反映されやすい構造があります。
この時間差があるため、発注者から見ると「急に見積もりが上がった」と感じやすくなるでしょう。
一方で、施工会社から見ると、見積もりを出したあとに資材価格が変わり、利益率が下がるリスクがあります。
国土交通省は、建設業の重層下請構造について、生産性向上を妨げる要因になり得ると整理しています。
資材価格が上がる局面では、この多層構造の中で価格転嫁が遅れやすくなり、下請けや中小建設会社に負担が残る可能性が高いです。
現場ごとに仕様が異なる
建設業では、現場ごとに使う資材や仕様が異なります。
同じ住宅工事でも、地域、建物の構造、設計、設備仕様、断熱性能、防水仕様、施工会社の標準仕様によって、必要な建材が変わるからです。
そのため、ナフサ由来の資材が値上がりしたり、入荷しにくくなったりしても、単純に別の資材へ置き換えられない場合があります。
配管材、断熱材、防水材、塗料、接着剤、シーリング材などは、性能や施工条件が重要だからです。
建設現場では、価格が安い代替品があっても、規格・性能・保証条件が合わなければ使えないことがあります。
たとえば、防水材を変更する場合は、下地との相性、耐久性、施工方法、保証範囲を確認する必要があります。断熱材を変える場合も、断熱性能、厚み、施工性、防火性能、設計仕様との整合性が重要です。
塗料や接着剤も同じです。外壁材や床材との相性、乾燥時間、耐候性、メーカー指定の組み合わせがあり、現場判断だけで変更できないことがあります。
結果として、代替品の確認に時間がかかり、工程調整や施主説明の負担が増えます。
住宅購入者やリフォーム検討者にとっても、この仕様差は重要です。
見積もりの中で「どの資材が値上がりしているのか」「代替できるのか」「性能や保証は変わらないのか」を確認しておくと、後からのトラブルを減らしやすくなります。
住宅分野への詳しい影響は、ナフサ不足が住宅に与える影響を解説した記事でも確認できます。
工期制約が厳しい
建設業でナフサ不足の影響が大きくなりやすいもう一つの理由は、工期制約が厳しいことです。
建設工事では、資材、職人、協力会社、重機、検査、引き渡し日程が工程表に沿って動きます。
資材の納期が遅れると、その工程だけでなく、後続の作業にも影響します。
たとえば、配管材が入らなければ水回り工事が進みません。防水材が遅れれば、外装や内装の工程に進めない場合があります。
また、塗料や接着剤が不足すれば、仕上げ工事や補修工事にも影響します。
建設現場では、ひとつの資材遅れが、職人手配、工程表、引き渡し時期まで広がることがあります。
国土交通省は、適正な工期設定を通じて長時間労働を是正し、週休2日を確保することは、建設業の将来の担い手を確保する観点からも重要だとしています。
2024年4月から建設業にも時間外労働規制が適用されており、無理な短工期で遅れを吸収しにくい状況です。
そのため、ナフサ由来資材の納期遅れは、単なる資材調達の問題ではありません。
職人の再手配、協力会社との調整、施主への説明、引き渡し予定の見直しにつながる可能性があります。
参考:国土交通省・工期に関する基準・国土交通省・公共建築工事における工期設定の基本的考え方
価格転嫁が遅れると中小建設会社に負担が残る
建設業で影響が大きくなりやすい理由として、価格転嫁の遅れもあります。
ナフサ由来資材の価格が上がっても、見積もりや契約にすぐ反映できるとは限りません。
特に中小建設会社では、資材価格の上昇分を自社で一時的に負担するケースがあります。
大手に比べて仕入れ量が少なく、価格交渉力や在庫余力が限られるため、建材価格の上昇が利益率に直結しやすくなります。
ナフサ不足による建材費の上昇は、価格転嫁が遅れるほど、中小建設会社の利益と資金繰りを圧迫する問題です。
国土交通省は、資材価格の高騰等が顕在化した場合、契約前に通知した受注者が注文者に請負代金等の変更を協議できる仕組みを示しています。
建材価格が変動する局面では、見積もり有効期限や価格変更条件を契約前に確認することが重要です。
施主側にとっても、価格転嫁の仕組みを理解しておくことは大切です。
値上げ理由が不透明なままだと不信感につながりますが、どの資材が、どの時期に、どの程度上がったのかを確認できれば、納得しやすくなります。
建設業でナフサ不足の影響が大きくなりやすいのは、サプライチェーンが多層で、現場ごとの仕様差があり、工期制約と価格転嫁の難しさが重なるためです。
ナフサ不足による建設業のリスク対策

代替素材の活用(バイオ素材・リサイクル材)
ナフサ不足への対応策として注目されているのが、バイオ素材やリサイクル材などの代替素材の活用です。
これらは石油由来原料への依存を減らし、供給リスクと価格変動の影響を抑える手段として建設業界でも導入が進みつつあります。
バイオ素材は、トウモロコシやサトウキビなどの植物由来原料から作られる樹脂で、バイオポリエチレンやバイオポリ乳酸などが代表例です。
従来のプラスチックと同様の性能を持ちながら、化石燃料依存を軽減できる点が特徴で、内装材や断熱材の一部で実用化が進んでいる状況です。
一方、リサイクル材は廃プラスチックを再加工して再利用するもので、建設資材の一部や梱包材、仮設資材などに活用されています。
特に建設業では使用後の資材量が多いため、循環型資源としての価値が高まっています。
ただし、これらの代替素材には課題もあるでしょう。
バイオ素材はコストが高く供給量が限定されており、リサイクル材も品質の安定性や用途制限といった問題があります。
そのため現状では完全な代替というより、既存素材と併用しながら段階的に導入されている段階です。
このように代替素材の活用は、ナフサ不足によるリスクを緩和する有効な手段であり、今後の建築・建設業において持続可能性と安定供給を両立するための重要な取り組みとなっています。
資材調達の分散と在庫戦略
ナフサ不足による供給リスクに対応するため、建設業界では資材調達の分散化と在庫戦略の見直しが重要な対策として注目されています。
従来のように特定メーカーや単一ルートに依存した調達体制では、ナフサ価格の変動や供給制限が発生した際に、即座に工事遅延へ直結してしまうためです。
まず調達分散では、複数のサプライヤーや輸入ルートを確保することで、特定地域の供給停止リスクを軽減します。
例えば樹脂材や塗料などは国内外メーカーを併用し、代替調達先を事前に契約しておくことで、急な供給不足にも対応しやすくなるでしょう。
一方で在庫戦略の強化も重要です。従来のジャストインタイム型調達はコスト効率に優れる反面、ナフサのように価格変動や供給不安が大きい資材ではリスクが高まります。
そのため、一定量の安全在庫を確保し、価格が安定しているタイミングで前倒し購入する「戦略的在庫管理」が求められています。
ただし在庫を増やしすぎると保管コストや資金繰りを圧迫するため、需要予測や工程管理と連動したバランス設計が不可欠です。
特に中小建設会社では資金余力が限られるため、資材ごとに優先順位をつけた在庫管理が現実的な対応策となります。
このように資材調達の分散と在庫戦略は、ナフサ不足による不確実性に備えるための実務的なリスクヘッジ手法として、今後ますます重要性が高まっています。
コスト上昇への価格転嫁と契約見直し
ナフサ不足による建材価格の上昇が続く中で、建設業界ではコスト増をいかに適切に「価格転嫁」するかが重要な課題となっています。
従来の固定価格契約では、資材費が急騰しても請負金額は変わらないため、施工側が損失を負担する構造になりやすく、特に中小建設会社ほど経営圧迫が深刻化するでしょう。
そのため近年では、資材価格の変動を契約に反映させる「スライド条項」の導入や、原材料費の上昇分を段階的に調整する契約形態への見直しが進んでいます。
これにより、ナフサ価格や建材価格が変動した場合でも、一定のルールに基づいて請負金額を再調整できる仕組みが整いつつある状況です。
また、見積段階からリスクを織り込む動きも強まっています。
具体的には、塗料や樹脂製品などナフサ依存度の高い資材については、価格変動幅を想定した上で余裕を持った見積設計を行うケースが増えています。
さらに発注者側との合意形成も重要であり、資材価格の透明性を共有することで、突発的な値上げではなく「予測可能なコスト変動」として扱う流れが求められているのです。
これにより、工事停止や契約トラブルを防ぎ、安定したプロジェクト運営が可能になります。
このように価格転嫁と契約見直しは、ナフサ不足時代における建設業の持続性を確保するための重要な経営戦略となっています。
DX・効率化によるコスト削減
ナフサ不足による建材価格の上昇に対して、建設業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)と業務効率化によるコスト削減が重要な対策として進められています。
資材費そのものを抑えることが難しい状況では、施工プロセスや管理体制の最適化によって全体コストを圧縮するアプローチが不可欠です。
まず効果が大きいのが、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などのデジタル設計技術の活用です。
これにより、設計段階で資材量を正確に算出できるため、過剰発注や無駄な在庫を削減できます。
また施工前に干渉チェックを行うことで、手戻り工事を減らし、資材ロスや人件費の抑制にもつながるでしょう。
さらに、現場管理のデジタル化も進んでいます。
クラウド型の工程管理システムを活用することで、資材の納品状況や工事進捗をリアルタイムで把握でき、遅延リスクの早期発見が可能になるのです。
これにより、ナフサ由来資材の供給遅れが発生した場合でも、代替手配や工程調整を迅速に行えます。
加えて、建設機械や作業工程の自動化・省人化もコスト削減に寄与しています。
プレハブ化やモジュール工法の導入により、現場作業を減らし、資材の使用効率を高める取り組みも広がっているのです。
このようにDXと効率化は、ナフサ不足による直接的なコスト上昇を抑えるだけでなく、建設業全体の生産性向上とリスク管理強化につながる重要な戦略となっています。
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建築・建設業界の今後|ナフサ依存からの脱却は進むか

脱石油化の流れとサステナブル建材
ナフサ不足を背景に、建設業界では「脱石油化」の流れが加速しつつあります。
これは、従来ナフサを原料としていた建材を見直し、再生可能資源やリサイクル素材へと置き換えていく動きであり、長期的な資源リスクの回避と環境負荷低減の両立を目的としています。
具体的には、木材や竹などの天然素材を活用した内装材や構造材の再評価が進んでいる状況です。
加えて、バイオマスプラスチックを用いた配管部材や断熱材、再生プラスチックを利用した外装材など、サステナブル建材の開発と実用化が拡大しています。
これらは従来の石油由来素材と同等の性能を目指しつつ、CO2排出量の削減にも寄与する点が特徴です。
また、欧州を中心に進む環境規制の強化も、日本の建設業界に影響を与えています。
建材のライフサイクル全体で環境負荷を評価する「カーボンフットプリント」への対応が求められ、脱石油素材の採用は今後の標準仕様になる可能性があります。
ただし現状では、コストの高さや供給量の限界、性能面での課題も残っており、すぐに従来素材を完全に置き換えることは難しい状況です。
そのため当面は、石油由来資材との併用を進めながら段階的に移行していく流れが現実的とされています。
このように脱石油化とサステナブル建材の導入は、ナフサ不足への対策であると同時に、建設業界の長期的な構造転換を促す重要な潮流となっています。
国や業界団体の取り組み
ナフサ不足による建材供給の混乱に対し、日本政府および業界団体は「サプライチェーンの安定化」と「重要物資の確保」を軸にした対策を強化しています。
背景には、中東情勢の影響でナフサ供給が不安定化し、塗料や樹脂など建設資材にまで影響が広がっている現状です。
まず政府の対応としては、経済安全保障の観点からナフサやその派生製品を「重要物資」と位置づけ、在庫の活用や輸入先の多様化を進めています。
また、経済産業省と国土交通省が連携し、供給不足が発生している分野に対しては、備蓄放出や代替調達の支援を行う体制を整えています。
さらに、国土交通省は建設現場で使用される塗料・シンナーなどの供給不安に対し、業界団体へ安定供給の要請を行い、価格の急激な変動を抑えるための協議も進めているのです。
実際に日本塗装工業会などは、原材料の安定供給と価格高騰への対策強化を政府へ要望しており、現場レベルでの混乱が深刻化していることがうかがえます。
また業界側でも、石油化学メーカーや建材関連団体が連携し、中東依存からの脱却や調達ルートの分散化を進めています。
エチレン生産設備の稼働率低下を補うため、中東以外からの輸入拡大や在庫調整も進められている状況です。
このように、国と業界団体は「短期的な供給確保」と「中長期的な構造転換」の両面から対応を進めており、ナフサ不足による建設業への影響を最小限に抑えるための体制整備が進行しています。
今後求められる企業戦略とは
ナフサ不足が常態化する可能性を踏まえると、建設・建築関連企業には従来の「安定調達前提の経営」から脱却した戦略転換が求められます。
特に重要なのは、価格変動と供給不安を前提にした“リスク分散型経営”への移行です。
まず調達面では、単一のサプライヤー依存を避け、国内外を含めた複数ルートの確保が不可欠になります。
ナフサ由来の建材についても、代替メーカーや異なる素材の選択肢を常に持つことで、供給停止リスクを最小化できます。
次に重要なのが、コスト変動を吸収できる契約・価格設計です。
資材価格の上昇を前提とした見積モデルや、スライド条項を組み込んだ契約を標準化することで、利益の安定性を確保する必要があります。
さらに、DXやデータ活用による需要予測の高度化も求められるでしょう。
過去の価格推移や国際情勢を分析し、資材を適切なタイミングで調達することで、コスト上昇の影響を抑えることが可能になります。
加えて、バイオ素材やリサイクル材などサステナブル建材への移行も重要な戦略です。
これによりナフサ依存を段階的に減らし、長期的な供給リスクからの脱却を図ることができます。
このように今後の企業戦略は、「調達の多様化」「契約の柔軟化」「デジタル活用」「素材転換」の4本柱を軸に、変動するエネルギー環境に適応していくことが不可欠となります。
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ナフサ不足はいつまで続く?今後の見通し

世界情勢とエネルギー市場の動向
ナフサ不足の背景には、単なる需給バランスの問題だけでなく、世界情勢とエネルギー市場の不安定化が大きく影響しています。
ナフサは原油から精製されるため、原油市場の変動を強く受ける資源であり、国際的な政治・経済リスクと密接に連動しているのです。
近年は中東地域の地政学リスクの高まりや、主要産油国の減産政策などにより、原油供給の安定性が揺らいでいます。
さらにウクライナ情勢以降、エネルギー供給網全体の分断が進み、欧州・アジア間での調達競争も激化している状況です。
こうした状況は原油価格を押し上げ、結果としてナフサの調達コストも上昇させています。
また、エネルギー転換(脱炭素)の流れも影響しています。
再生可能エネルギーへのシフトが進む一方で、石油化学製品の需要は短期的には依然として高く、供給と需要のギャップが解消されていません。
特にアジア地域では人口増加や都市化に伴い、建材や樹脂製品の需要が拡大しており、ナフサの需要は高止まりしています。
このように、ナフサ不足は国際政治リスク、エネルギー政策の転換、需要拡大が複合的に重なって発生しており、建築・建設業にとっては長期的なコスト上昇圧力として作用し続けているのが現状です。
日本の石油化学産業の課題
日本の石油化学産業は、ナフサ不足の影響を受けやすい構造的な課題を抱えています。
最大の問題は、原料としてのナフサ依存度が依然として高く、供給の大部分を輸入に頼っている点です。
特に中東地域への依存度が高いため、国際情勢や海上輸送リスクの影響を直接受けやすい状況にあります。
また、国内の石油化学プラントは老朽化が進んでおり、生産効率やコスト競争力の面で海外勢に比べて不利になりつつあります。
その結果、需給が逼迫した際に増産対応が難しく、ナフサ不足が発生すると供給調整が追いつかないケースが増えているのです。
さらに、脱炭素の流れにより石油化学製品の長期需要は減少するとの見方がある一方で、短期的には建材・包装材・工業製品などの需要は依然として高く、需給バランスが不安定になっています。
このギャップがナフサ価格の変動を増幅させ、国内産業の収益性にも影響を与えています。
加えて、エチレンセンターの統廃合や国内生産能力の再編も進んでおり、供給拠点の減少が柔軟な対応力を低下させている点も課題です。
このように日本の石油化学産業は、構造的な供給制約と国際依存の高さから、ナフサ不足の影響を受けやすい脆弱な状態にあるといえます。
建設業界への中長期的な影響予測
ナフサ不足が長期化した場合、建設業界には「コスト構造の常態的な上昇」と「供給制約の固定化」という二つの大きな変化が起きると予測されます。
短期的な価格変動ではなく、建材全体の基準価格が底上げされることで、従来の見積体系そのものの見直しが迫られる可能性が高いです。
特に影響が大きいのは住宅分野で、断熱材・配管・塗料などナフサ由来資材の比率が高いため、建築コストの上昇がそのまま販売価格に反映されやすくなります。
その結果、住宅購入層の負担増加により需要が鈍化し、新築着工数の減少につながる可能性があるでしょう。
また中長期的には、資材調達の不安定化を前提とした施工計画が一般化し、「工期の長期化」や「分割発注の増加」といった業務フローの変化も進むと考えられます。
これにより現場管理の複雑化や人件費増加が発生し、特に中小建設会社の負担は大きくなる見込みです。
さらに、業界全体としてはナフサ依存からの脱却が課題となり、リサイクル素材やバイオ由来樹脂など代替材料への転換が加速すると見られます。
ただし移行には技術・コスト面の課題があり、短期間での完全置き換えは難しいのが現実です。
このようにナフサ不足は一時的な資材問題ではなく、建設業界のコスト構造・供給体制・施工方法そのものを長期的に変化させる要因となっています。
ナフサ不足はおさまりつつある?建設業への影響は今後も残る
ナフサ不足は一時期より落ち着きつつありますが、建設業への影響がすぐに消えるとは限りません。
ナフサ価格は原油価格や為替、中東情勢などの影響を受けます。
そのため、供給不安が一時的に落ち着いても、建材価格や物流費、すでに高値で仕入れた在庫コストが残る可能性が高いです。
特に建設業では、塩ビ管、断熱材、防水シート、接着剤、養生材など、ナフサ由来の石油化学製品を使う資材が多くあります。
| 状況 | 建設業への影響 |
|---|---|
| ナフサ価格が下がる | すぐに建材価格へ反映されるとは限らない |
| 高値在庫が残る | 資材価格が高止まりしやすい |
| 物流費が高いまま | 現場への配送コストが下がりにくい |
| 円安が続く | 輸入資材や原材料の価格上昇要因になる |
また、石油化学製品は原料価格が下がっても、川中・川下の製品価格へ反映されるまで時間差が出ることがあるでしょう。
第一生命経済研究所も、ナフサ価格上昇によるコスト波及について、上流から川下製品まで価格転嫁の進み方に差があると分析しています。
つまり、ナフサ不足が一時的におさまりつつあっても、建設現場ではしばらく資材価格や工事費の高止まりに注意が必要です。
建設業では「ナフサ不足が落ち着いた=すぐに建材価格が下がる」とは考えず、原油・為替・物流費を含めて総合的に確認することが重要です。
住宅価格への影響については、ナフサ不足で家が建てられない?住宅メーカー・リフォーム業界への影響を徹底解説でも詳しく解説しています。
ナフサ不足の関連記事一覧
ナフサ不足は、食品・日用品・医療・建設・物流・農業・半導体など、さまざまな業界へ影響を与える可能性があります。
以下では、ジャンル別に関連記事をまとめています。ぜひご確認ください。
| ジャンル | 関連記事 |
|---|---|
| 基礎知識 | |
| 食品・生活 | |
| 外食・飲食 | |
| 食品供給 | |
| 物流・製造 | |
| 建設・住宅 | |
| 医療・先端産業 |
ナフサ不足・建設業に関するよくある質問 FAQ
ナフサ不足は建設業にどのような影響を与えますか?
ナフサ不足は、建設業で使用されるプラスチック製品や合成樹脂製品の価格上昇につながる可能性があります。
具体的には、塩ビ管・断熱材・防水シート・接着剤などの資材価格が高騰し、工事費や建築コストの上昇要因となるでしょう。
さらに物流費やエネルギーコストも重なるため、建設会社の利益圧迫や工期への影響が懸念されています。
ナフサ不足で建材価格は上がりますか?
上昇する可能性があります。
ナフサは石油化学製品の原料であり、建設業で使われる多くの資材に利用されているからです。
そのため供給が不安定になると、塩化ビニル管や断熱材、防水材などの価格上昇につながる場合があります。
| 建材 | 主な用途 | 影響 |
|---|---|---|
| 塩ビ管 | 給排水設備 | 価格上昇 |
| 断熱材 | 住宅断熱 | コスト増加 |
| 防水シート | 防水工事 | 価格高騰 |
ナフサ不足で工期が遅れることはありますか?
あります。
必要な建材の納期が長期化すると、工事スケジュール全体に影響するためです。
特に住宅建築や大規模建設工事では、一部資材の不足が全体工程の遅延につながるケースがあります。
物流問題や人手不足が重なった場合は、さらに影響が大きくなる可能性があります。
ナフサ不足は住宅価格にも影響しますか?
影響する可能性があります。
住宅には断熱材や配管材、防水材などナフサ由来の製品が数多く使用されているからです。
これらの価格が上昇すると建築コストが増加し、新築住宅価格やリフォーム費用へ転嫁される場合があります。
詳しくはナフサ不足で家が建てられない?住宅メーカー・リフォーム業界への影響を徹底解説も参考にしてください。
ナフサ不足はいつまで続くのでしょうか?
現時点では一時期より落ち着きつつありますが、完全に解消したとは言えません。
原油価格や円安、地政学リスク、物流コストなど複数の要因が影響しているためです。
仮にナフサ供給が安定しても、建材価格や物流費はすぐには元に戻らないケースが多く、建設業への影響はしばらく続く可能性があります。
建設会社はどのような対策を行っていますか?
建設会社は資材調達先の分散や在庫確保、工程管理の見直しなどを進めています。
また、代替資材の活用や物流効率化によってコスト上昇への対応を図る企業も増えています。
今後は資材価格だけでなく、物流費や人件費も含めた総合的なコスト管理が重要になるでしょう。
まとめ
ナフサ不足は単なる原料問題ではなく、建築・建設業のコスト構造そのものを変える要因です。
特に影響が大きいのは以下の3点です。
建材価格の構造的上昇
工期遅延の常態化
中小建設会社の収益圧迫
今後は一時的な価格変動ではなく、「ナフサ依存を前提としない建設体制への移行」が求められる局面に入っています。



